例えば、
“食後にこの薬を飲んでくださいね”って、
手話でどう表現する?
全国手話研修センターにお勤めで、
研修の企画担当で、
手話通訳士の養成もしておられる方との
打ち合わせの中で、
そんな話になりました。
「ごはん」「食べる」「あと」
「薬」「飲む」「お願い」
その単語を並べて表現しましたが、
わたしの表現した手話だと、
ごはんを食べて、
薬を飲んで、
それからお味噌汁を飲んだり、
おかずを食べてしまう可能性があると。
通訳は、
言葉をただ訳せばいいというものではなく、
いかにわかりやすく、
正確に伝える工夫ができるかがとても大切だと、
教えてくださいました。
そして、ろう者の生活や、
困りごとを理解したり、
想いをはせることができる気持ちが、
何よりも大切だと話してくださいました。
「想像力」と「思いやる力」
いつも私が感じていること。
手話通訳の世界でも、
手話の技術と同様に、
もしくはそれ以上に、
必須とされる力なんだと思います。
お弁当やさんのレジで、
「お箸いりますか」と、
おつりを用意しながら、
下を向いたまま話してるアルバイトさんがいました。
返事がないのでもう一度
「お箸いりますか」
今度はお弁当をビニール袋にいれながら。
私の前で会計をしていた人は、
補聴器をしていました。
アルバイトさんの声は届いてない。
肩をたたき、
「お箸いりますか?って聞いてますよ」
と伝えたことがあります。
聴こえる聴こえない関係なく、
人に話しかけるときは、
その人の方を見ようよ。
一回は下向いたままでも、
返事がなかったら、
あれ?と思ってその人の方見ようよ。
手話がわからなくても、
お箸を見せて、いる?いらない?
とジェスチャーでも十分伝えられるよ。
そしてその駅には、
ろうあ会館がある。
近所にそういう施設があるわけだから、
せめてそれぐらいの手話は、
お店のみんなが知っておこうよ。
そんなことを思ったことを
思い出しました。
手話通訳士は、
言葉をただ訳せばいいというものではない。
昨日お話した方の言葉。
それは何にでも通じることだと思います。
お医者様は、
ただ病気をみればいいというものではない。
先生は、
ただ知識を教えればいいわけではない。
経営者は、
利益をあげればいいというものではない。
引っ越し屋さんは、
荷物を運べばいいってもんでもない。
何を届けているのか。
何を提供しているのか。
何を願っているのか。
志を今一度◎
写真撮影:橋本和典